2016.12.20、東京地裁判決
【紛争内容】
住居用賃貸借契約:賃料10.5万円、敷金1ヶ月分(10.5万円)
賃借人は8年間居住後本物件を退去
賃貸人はハウスクリーニング費用を含む原状回復費用として約18万円を賃借人に請求
これに対しての賃借人の意見「ハウスクリーニング費用は賃貸人が通常負担すべきもので、本件賃貸借契約では賃借人負担の特約もない。又『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』によれば、壁クロスの耐用年数は6年であり、本物件明渡しの時点で価値は0円または1円であり、敷金から控除できる金額は数千円である」から敷金10万円の返却を求め訴えた
賃貸人の意見「賃借人による本物件の使用態様は劣悪で、ハウスクリーニングやクロス張替等の原状回復費用が必要である」と反訴
【判決内容】
裁判所は賃借人の敷金返還請求を棄却
理由①
ハウスクリーニング費用については、賃借人は善管注意義務に反した使用であり、現状回復義務の不履行に基づく原状回復費用として認める事は相当である
理由②
壁クロス張替費用については、国土交通省の『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』では、壁クロスの耐用年数は6年とされ、本物件における残存価値は最大で1円であると主張するが、仮に耐用年数を経過していても賃借人が善管注意義務を尽くしていれば、張替は必要なかった。又同ガイドラインによっても「経過年数を超えた設備等を含む賃借物件であっても、賃借人は善良な管理者として注意を払って使用する義務を負っていることは言うまでもなく、そのため経過年数を超えた設備等であっても、修繕等の工事に伴う負担が必要となることがあり得る」とされている
【参考にしたい内容】
本事案は、室内の汚損・破損が激しく、賃借人が善管注意義務を果たしていないと判断された事例です
同ガイドラインでは、法定耐用年数による減価割合の考え方を示す一方で「経過年数を超えた設備等であっても、継続して賃貸住宅の設備等として使用可能な場合があり、このような場合に賃借人が故意・過失により設備等を破損し、使用不能としてしまった場合には、賃貸住宅の設備として本来機能していた状態まで戻す、例えば、賃借人がクロスに故意に行った落書きを消すための費用(工事費や人件費等)などについては、賃借人の負担となることがある」という内容です